去年秋、栃木県から上京してきた鈴木しおりさん(25)。鈴木さんが入居したのは、東京・日野市の団地、その名も「多摩トキワソウ団地」だ。トキワ荘と言えば、手塚治虫さんや、きのう亡くなったことが分かった藤子不二雄Aさんら、日本を代表するマンガ家たちが青春の日々を過ごした伝説のアパート。
その現代版とも言える「多摩トキワソウ団地」は、漫画家を目指す若者を支援するNPO法人が、古い団地を活用したシェアハウスの中で去年6月から運営を開始。現在は40人近くの若者が時には悩み、励まし合いながら暮らしている。
そんなトキワソウ団地の新たな住人となった鈴木さん。高校生の時に学校の友達と一緒に漫画を描き始めたが、卒業後は周囲にマンガを描く人がいなくなり、一人で描くのが辛くなってきたそう。同じ夢を持つ仲間と一緒に漫画家を目指したい、そんな思いからこの場所にやってきたのだ。
引っ越しを済ませると、早速マンガの執筆にとりかかる鈴木さん。応募する賞の締め切りが、約2週間後に迫っていた。
鈴木さん
「本当に1秒でも早くペン入れを終わらせて、 締め切りギリギリまで頑張って仕上げするしかない」
鈴木さんの作品は、ホテルの清掃員が殺人事件のナゾを解くミステリー漫画。半年ほど前から構想を練りはじめ、ようやく完成目前までこぎ着けたそう。連日連夜、描き続け、作品は締め切り前日についに完成。目指すは、作品が雑誌に掲載される入選以上だというが、果たして結果は…。
そんな鈴木さんより4か月早く入居した、21歳の松おうきさん(ペンネーム)。ヒーローと怪獣が闘う読み切りマンガを描いていたが、ハナシの流れやコマ割りを考えるネームと呼ばれる段階で苦戦していた。
松さん
「だいぶ迷ってて。ヒロインを出すかどうかとかそのへんぐらいから」
松さんにとっても、支えとなっているのが共に暮らす仲間たちの存在だ。
松さん
「漫画を描いている人の色々な話を聞けるし」「やんなきゃなっていう気持ちもかき立てられる」
明るく社交的な松さんの部屋は、住人のたまり場にもなっているという。松さんがマンガを始めて描いたのは、小学生の頃。小学4年生の時の文集には、早くも「夢は漫画家」と記されていた。
東京でマンガ家への道を進む松さんを家族も応援している。
松さんの母親
「心配よりは安心って言ったらおかしいですかね」
「(漫画家の道へ)よし行ったって」
「この子の描く絵が好きで、もっと知ってもらって、好きなモノが好きなように描けるようになったらいいなと」
家族にも支えられて、夢を追いかける松さん。
「漫画を描き続けられるのが個人的にも幸せだし、応援してくれた両親らにマンガ家になれたよって言って報告できるように頑張っています」
きょうも、マンガ家の卵たちが夢をかなえるため奮闘している。
(2022年4月8日放送「news every.」より)
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