新型コロナウイルスの感染対策の一つとして、飲食店や施設などに導入が進む“CO2センサー”。二酸化炭素の濃度を計測して、室内の換気が必要かどうか確認できるもので、いまや“安全の証”として、多くの店で見かけるようになりました。その一方で、あるメーカーの技術者は、疑問に感じていることがあります。CO2センサーを開発・製造する会社で技術アドバイザーを務める松浦雅彦さんは、こう話します。
宝産商技術アドバイザー・松浦雅彦氏:「CO2を含めたセンサーは値段が高いので、2000~3000円でできるはずがない」
松浦さんは、他社製品をいくつか買って調べたそうです。
宝産商技術アドバイザー・松浦雅彦氏:「それらしい数字が、ふらふら動く作り方で、本当に測っているか、よくわからない」
幅広い価格帯で販売されているCO2センサー。実際に二酸化炭素を計測できない製品が出回っているのでしょうか。私たちは専門家の協力のもと、検証することにしました。電気通信大学の石垣陽特任准教授。自らもCO2センサーの開発に携わっています。
今回の検証では、ドライアイスで部屋全体を二酸化炭素で満たします。送風機で拡散し、ドアに目張り。これで部屋は二酸化炭素が、充満した状態になりました。検証に使ったのは、正確に測れる研究用のセンサー1台と、5万円程度の国内メーカーのセンサー1台、ネット通販で買った1万円以下のセンサー6台です。各センサーの数値は、別の部屋でモニタリングします。
検証開始から5分後。研究用のセンサーの値は、感染リスクが非常に高いとされる“密”の状態です。
電気通信大学・石垣陽特任准教授:「約3200ppmくらいなので、プラスマイナス10%で見ると、(他のセンサーは)だいたい2800~3500ppmの間で表示がされていればいいのかなと」
研究用のセンサーに比較的近い数値になったのは、国内メーカーのほか、ネット通販で購入した3台です。
一方、ネットで購入した残りの3台の値は、実際とは大きくかけ離れた数値を計測しました。特に計測できなかった1台のセンサーで、さらに検証を重ねました。たまたま1台だけ故障した可能性も考え、同じものを3台用意し、もう一度計測してみました。その結果、実際には“密”な状態とされましたが、3台の表示は屋外レベル。ほとんど二酸化炭素を計測できていませんでした。
分解して、その中身がどうなっているのか、顕微鏡で見てみました。
電気通信大学・石垣陽特任准教授:「空気中にある可燃性のガスや有機的なガスを測定するVOCセンサーと思われる。CO2のセンサーではないので、CO2は測れない」
内蔵されていたのは、二酸化炭素ではなく、アルコールやアンモニアなど有機ガスを計測するセンサーと見られます。3台すべて分解しましたが、結果は同じでした。
これらはどこの製品なのか。問い合わせ先を調べると、中国に窓口がありましたが、何度かけても、つながることはありませんでした。
二酸化炭素を計測できない、これらのセンサー。実はある特徴があります。
電気通信大学・石垣陽特任准教授:「簡単なチェック方法で、消毒用のアルコールを家庭に持っていると思う。アルコールを手に付けて、センサーに塗って、値を見る」
すると、センサーの値は急激に上昇。これは、センサーが二酸化炭素ではない別のガスに反応しているためと石垣准教授は指摘します。一方で、検証で使った国内メーカーの製品は、アルコールに全く反応しませんでした。
見かけだけでは性能がわからないCO2センサー。石垣准教授は、性能を保証するガイドラインの必要性を訴えます。
電気通信大学・石垣陽特任准教授:「技術者が分解・実験して初めてわかるので、こういうものの流通を止めるには、設計者への倫理だけでは頼れない。
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